エスしか聞こえないな


33歳のすっとぼけた成歩堂さんに言わせると、これほどエロくさい台詞はないと思います。
 気持ちだけR18です。



 きつく寄せていた眉間と噛み締められた唇。
 微かにそれが緩んだと思った途端、アイスブルーの瞳からボロボロと涙が零れ落ちた。シーツに滲みていく透明な球体が、不思議なほど綺麗に見えた。
 吸い寄せられるように、成歩堂が顔を近付けた途端、響也は腕を振り上げる。
 
「…っ、離せっ! はな…せ!!」

 ふいに暴れ出した体躯を抑えつける。
 さっきまでの弱々しさは欠片もない、本気の抵抗だ。あるだけの力で拘束から逃れようと抗う力は、子供とはいえども男のもので、女を組み敷くのとは訳が違う。

 いや、立派にこうして煽られている相手を子供扱いするのもおかしな話だ。

 掠めた考えに苦笑した成歩堂は肘で顎を強打され、思わず仰け反った。
 その隙に身体の隙間から這い出そうと前へ進んだ響也の身体を、腰に両手を当てて引き戻す。反撃の余地すら与えない為に肩口に顎を乗せて、響也の両腕を後ろ手に抱え込んだ。
 
 「響也!」

 きつく名を呼ぶと、褐色の肢体はビクリと大きく震えて動きを止めた。ハァハァと荒い息の合間に、涙を呑む嗚咽の声が混じる。
「大人しくするんだ」
 今度は少しだけ、声のトーンを落としてやる。

「…No,I am sorry I cannot accept your kind offer.」

 流暢な発音に彼が帰国子女だったことを思いだした。しかし、どうして、こんな場面での返答が英語なのだろう。あっけにとられ、ぽかんと眺めてしまった響也の瞳は、揶揄の色すら浮かべていた。
 震えながらも素直に従わないどころか、こうして反抗心を露わにする響也に、征服欲の火種が成歩堂の中で、手がつけられない程に燃え上がる。
 この子はどうしてこうも、加虐心を煽るのか。本人に自覚がないというのは、考えものだ。

「I didn't hear anything.」

 耳朶に直接吹き込むようにと、低くささやき成歩堂は響也の下腹部に視線をやった。そこにはすでに高く屹立した響也自身が先走りの涙を流しながらその存在を主張している。
 まだ触れられてもいないのにと思えば口角が上がる。
 そして、左手は響也の両腕を抑えつけたまま、もう片方はしとどに濡れる下腹部に伸ばした。シーツに沈み罵声と拒絶を繰り返す声が、一瞬途切れる。
「……あぁ…っあ、」 
 汗の散った肢体は大きくしなり、悶えた。

 イエスしか聞こえないな。

 クスリと嗤って、成歩堂は獲物に止めをさす如く、動脈になぞるようにキスマークを残した。



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